時代劇、こんな役で

2006年2月26日
 おとといの日記に「鬼平犯科帳」を出してしまって。つい、ぺらぺらとめくって拾い読みをしてしまった。
 
 やっぱりねえ、おもしろいわ。

「ドミソ侍」以来、中居くんに時代劇をやってほしいという書き込みや、驚く速さで作られた二次創作を読んだ。

 で、前から思っていたのだけれど。

「仕掛人・藤枝梅安」のシリーズに小杉十五郎という浪人剣客が出てくる。この男は何度も梅安たちの仕掛けを手伝う中で悪党どもの返り血を浴びながら、不思議とその匂いが染み付かない。初めて殺人に手を染めてしまってから自分が失ってしまったものを持ち続ける彼を、梅安はとても大切にしている。

 その十五郎の容貌というのが
「痩せて小柄な、まるで少年(こども)のような躰つきの、それでいて、いかにも元気そうな、眼の大きい人で…」

 ね、誰かさんを想像するでしょ。

 また、いい男なのよ、小杉十五郎。見た目もあるけど、中身が。若者の清廉さを失っていない、男が惚れるタイプ。
 実は梅安、彼に仕掛けの手伝いをたのみながら、この世界に関わってほしくないと思っている。十五郎の人柄を愛するが故だ。

 これまでに見た十五郎は、柴俊夫さんと阿部寛さん。ふたりとも眼は大きいけれど、小柄からは遠い。なにより梅安よりも大きかった。単純に見た目の問題で、庇護欲がわかないのよ。梅安が守りたいのは小柄な体躯ではなく、血に染まらない人柄なんだけど、たとえ精神的にせよ、映像にしたときに守るほうより守られるほうが小さいほうが、より納得できるじゃないですか。

 阿部ちゃん(こう呼んでしまおう)のときの梅安は渡辺謙さんだった。「砂の器」を見た後だと、なんだか惜しい気がする。が、どっちにしても中居くんでは若すぎた。でも、今なら演れる。主役ではないけれど、演じがいのある役だと思う。これまでにない役柄に挑戦することにも、意義があるはずだ。

「仕掛人・藤枝梅安」は金ずくで殺しをする故に生と死のきわで繋がった男たちの、友情の話でもある。それは、ときに切なさすらおぼえる。それを、彼に感じたい。時代劇を充分に心得た脚本とスタッフと役者が、新しい中居正広を開拓する。

 見たいなあ、そういうの。役が役者を作るのを「白い影」と「砂の器」で目の当たりにした。あの驚きと感動をいま一度味わいたい。

池波正太郎作/仕掛人・藤枝梅安 梅安蟻地獄より一部引用

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