チェンジブロックから後の,人間の姿をした絶望に逢うために,何度も映画館へ足を運ぶ.その絶望の名前は清水豊松なのか,中居正広なのか.

両方かも知れない.

「捨て身」と,脚本の橋本先生は評されていたが,役に取り込まれたのだろう.自分の人生がいかについていなかったかを綿々と話し,ついには人目も憚らず声をあげて泣く.おそらく実際に泣いたのだ.映画という虚構の世界でのことであれ,初めて見る中居正広という人の姿だった.

何かをぶつぶつと呟きながら処刑場へ向かう場面から,ロープの輪を見上げるまで,彼のヒトという動物を人間たらしめていた感応は全て失われていた.黒い布を被せられる直前,写真を見て微笑んだ刹那に,彼の人間は戻ってきて,死んだ.

「貝になりたい」と書き遺した男にとって,はたしてそれは救いだったのだろうか.

漆黒の真球のような絶望を深く抱きしめたい.わたしにとって,この映画を見る目的は,ここにある.

コメント

さらさ
2008年12月16日22:28

はすさま
サクッと胸に突き刺さり、いちにち心から離れなかった文章。
ありがとうございます。

はす
2008年12月18日23:37

さらささま
コメント,ありがとうございます.
遅いレスで申し訳ありません.
これから細々した感想を書きたいと,思っています.

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